路地100字
20210908_路地奥の路地
こっちだよ。 声をかけられて両脇に並ぶ店の隙間を曲る。 コロナ禍で殆どの店の灯は落ちてる。 仄暗い路地の中程に灯りが一軒。引戸をガラガラと開け、暖簾をくぐると中には賑やかな通りが続いてた。さ、どの店にする？
路地100字
路地100字
20210901_行き止まりの病院
長い坂道を上って突き当りを左に曲がると、路地の一番奥に病院が聳え建っている。 そこから出て来たとか、いずれそこに行くんだという人は多いのに、その病院で何を治すせるのかを知っている人には会ったことがない。 （本文と写真は関係ありません）
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20210804_廻る
この辺りの路地は感じが似てるから分かりにくいんだ。 男はそう言って先を歩く。 なぜ後ろを歩いているのか考えていると、気付いたら前を歩いているのは俺だった。 はぐれないように気をつけろ、そう後ろに声をかける。 （本文と写真は関係ありません）
路地100字
20210728_こえなんだー？こえ
彼女の手をつないで歩いた路地。 あれから30年。 今また、彼女によく似た笑顔の子供の手を引いてこの路地を家に向かって歩いている。 おじいちゃんこえなんだー？こえ。 小さな指で色々なものを指して尋ねるのも同じ。 （本文と写真は関係ありません）
路地100字
20210720_上書き
料理の匂いに誘われて曲がった路地。日本料理にはない八角や丁香、桂皮などが混ざった香り。 一瞬自分がどこにいるのか見失うような錯覚。 いや、ここはあの街じゃない。 懐かしい記憶をまた一つ、上書きで消していく。 （本文と写真は関係ありません）
路地100字
20210719_空の穴
砂浜沿いに舗装された道をしばらく歩き、右に曲がって狭い路地に入る。 背の高い樹に覆われた分だけ涼しい、細い道を表通りに向けてまっすぐ歩く。 振り返ると樹の影で縁取られた青い空を自転車が横切るところだった。 （本文と写真は関係ありません）
路地100字
20210712_石柱の路地
両脇に不思議な形の石柱が置かれている路地。 奥に進んでも両側には家々が並ぶだけなのだけど、あれは何のために置かれているんだろうと思っていたら、突き当りに大きな木が生えていた。 そうか、ここは参道なんだな。 （本文と写真は関係ありません）
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20210709_移ろう
バス停から2つ角を曲がると大通りのすぐ側とは思えない静かな路地に入る。 あの頃、毎晩手をつないで歩いた道。路地も夜もずっと続けばいいのにと思ってた。 昼過ぎに一人で歩く路地は思っていたよりずっと短かった。 （本文と写真は関係ありません）
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20210705_飲み屋街の突き当り
両側に小さな飲み屋が連なる路地の突き当りに祖父の家はあった。子供の頃遊びに行った当時はまだ店をやっていた気がする。 今新しく建て直された家には知らない家族が住んでいる。 飲み屋街の突き当りにある普通の家。 （本文と写真は関係ありません）
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20210703_路地裏の店
「路地裏の店」で飲んだ。 入口は大通りで路地には面してないのに。 レジの奥に飾られた写真の路地に、同じ入口が写っていた。 店主に尋ねると、たった数年の出来事らしい。 そうか、路地も生まれては消えていくんだな。 （本文と写真は関係ありません）
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20210701_階段
路地っていうより階段だよね。そう言いながら彼女は数段先を上る 。僕は息切れでうまく返事ができず、不格好に彼女を見上げて笑うのがやっとだった。 そういえばどこまで上るのか聞いてなかった。階段はまだ続いてる。 （本文と写真は関係ありません）
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20210629_飛び石
線路をまたぐ路地を左に折れると、線路沿いに続く飛び石の道。 市街地なのに何故か舗装されないまま今も残っている。 娘は手を離して飛び跳ねながら石を渡りたがる。 ああ、こうして少しずつ彼女は先に進んでいくんだ。 （本文と写真は関係ありません）
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20210625_巡る
ここはさっき右に曲がった路地だ。 何故だろう。左に曲がってもまた同じ場所に戻ってしまう。 何度も繰り返して疲れた僕は、突き当りに建っている家の門をくぐった。 残念なことに…その奥にはまた門が建っていた。 （本文と写真は関係ありません）
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20210622_川
路地の両脇に生える樹に挟まれて、空は川のようだと言う。時々白く見えるのは泡のような雲。 娘の手を引きながら散歩した夏の日のこと。 「お母さんには内緒だよ」 アイスを食べながら、ぶらぶらと楽しい帰り道だった。 （本文と写真は関係ありません）
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20210621_あの頃と同じ色の路地
先週通りがかったその路地は、数年前に上海で歩いた路地と同じ色だった。 懐かしいその色は、曖昧になっていた当時の記憶を呼び戻し、匂いや音まで思い出させる。 もう二度と戻れないその場所。 時間は街も人も変える。 （本文と写真は関係ありません）
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20210620_入口しかない路地
タクシーに乗ってその路地を目指す。 運転手さんに「そこの出口あたりでおろしてください」と伝えると 「お客さん、その路地には入口しか無いんですよ」という返事。 そんな恐ろしい路地へ飲みに行くことになるなんて。 （本文と写真は関係ありません）
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20210619_口
路地から大通りに出てきた老人は眩しそうに空を見上げ、ため息をついた。 気になって通りがかりに覗くと真夏の日差しが届かないほど暗い。 目を凝らしていると、そこは口、という声。 そうか、彼は口から出てきたんだ。 （本文と写真は関係ありません）
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20210618_この先は是非お一人で
路地をいくつか曲がると前を歩く男が言った。 この先は是非お一人でどうぞ。 僕は少し混乱しながら男を追い越した。 しばらくすると僕の後ろをついてくる足音が聞こえた。 ああ、そういうことか。 僕はゆっくり振り返る。 （本文と写真は関係ありません）
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20210617_レストラン2
路地の入口に建っているレストランは食事を出さない。 代わりに店主が「これ」と決めた食材を売ってる。 理由は簡単で、良い食材にはシンプルな味付け以外必要ないから。 誰も入らないドアから毎日食材だけが出ていく。 （本文と写真は関係ありません）
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202106016_レストラン
その路地の突き当りには、この世のものとは思えない素晴らしい食事を振る舞うレストランがある。 料理を食べるとこの世に思い残すことはなくなってしまうほど。 ただ、その店から人が出てくるところを見た者は居ない。 （本文と写真は関係ありません）