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もう二十年以上前、大学生だった僕はあるバーで働いていた。
とても居心地の良いバー(だったはず)で、バブル前夜は沢山のお客さんが入れ代わり立ち代わりカウンターを埋めてくれていた。
バブルが弾けて夜の街から人が引いた後も何人もの常連さんがカウンターに座ってくれるような店だった。

僕はその店で今の仕事、ものを売ることを覚えた。大学生の僕にとって、お客さんはお客さんであると同時に先輩であり兄姉だった。酒の飲み方や、店での振る舞い方、人と話をするときや聞くときの姿勢、物事の考え方をたくさん教えてもらった。

今も僕は当時のお客さんのお陰で幾つかの仕事を、時には一緒に、させてもらっている。

その店が無くなったのはもう十年くらい前のことではないか。
店のオーナー(僕たちは親方と呼んでいた)の話はそれ以来聞かなかった。
大学の後輩で、僕達の跡を引き継いだのが一人、親方と会っていたようだったけれど、僕には遠慮してか特に話をすることもなかった。

そして一昨日、その後輩から親方が亡くなったと連絡が来た。
病気で入院していたこともその後輩から聞いていたのだけれど、まだ大丈夫だろうと思っていた。
その後輩が見舞いに行けて良かった。

僕自身は当時のお客さんで、今でも連絡が付く人達に通夜、告別式の連絡をした後、少しだけ感傷的な気分になって、昨日は一人で酒を飲んだ。

ちょうど波のようにさよならが来ました。だ。

良いことも有った。
それこそ二十年ぶりに、連絡が取れなくなっていた、釣りの師匠と連絡が取れた。僕にフライ・フィッシングを教えてくれた師匠(笑)。最近釣りに行ってないなぁ。
とにかく、二十年ぶりに話をした師匠は元気そうだった。大病して今は酒も止めたと笑いながら話していた。

遠く離れる者、ここに残る者…

師匠が残っていてくれて良かった。
そう思うと、あの時のあの店は本当に良い場所だったと思えるようになってきた気がする。

久しぶりに文章を書いた。

親方ありがとう。お疲れ様。

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