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どう書き始めたら良いか迷うのだけど。

この間、その日が終わる少し前に、僕にとって非常に大事な、且つ勇気を試される時間が待っていた。
8年前、自分の周りに起きた不都合なことを、全てその人のせいにして処理した僕の半年間をやり直し、僕が持っている、もう動かすことはないと思っていたその人の時計を、また動かすことができるかもしれない、そんな時間。

久しぶりに会ったその人は、僕が覚えている本人に戻っていた。
エネルギーに満ちていて笑顔が多く、今回、関係修復のきっかけを作ってくださった、こちらも恩師に近い元取引先の大先輩と楽しそうに仕事の話をしていた。

僕がこれまでの非礼を詫びた時、ほんの少しだけ真顔で、
「おまえは覚えているか分からんけど、ある日、恵比寿と目黒の間にある線路沿いの道でお前にすれ違ったことがあったんや。その時な、お前の顔を見てすれ違って、なんとも言えない寂しい気持ちになったんや。どうしてそんなになったかなと思ってな...」
僕も覚えていた。あの時、あの道ですれ違った、その瞬間を。鮮明に。
その時の僕は寂しいというより、本当に困惑していた。その人との関係はそれくらい僕の中では悪くなっていたから。

大好きな上司だったし、憧れの経営者でもあった。仕事に対する考え方や、人と向き合うことの大切さを沢山教えてもらった。優しいだけでは人の役に立てないことも、その人に教わったことの一つ。
仕事については大変厳しかったので、意見の対立もあったし、怒鳴り合うように議論したこともあった(主に怒鳴られていただけだけど)。でも、今思い直してみると、僕が異なる意見をきちんと説明できた場面では、ほとんどのケースでそれを取り入れた妥協案を提示してくれていた気がする。
会社では皆が恐れる経営者だった(と思う)。でも、節目節目の飲み会では、いつもその人のテーブルで僕達は酒を飲んでいた。

それなのに、8年前、関係は最悪だと僕は思っていた。

そこから、僕が持っていたその人の時計は針が止まったままだった。ある時期はその時計を僕が持っていることすら忘れるほどだった。

きっかけはいくつか有った。もしかしたら大きな誤解をしていたかもしれないと、数年前に思う出来事もあった。でも、その時の僕は、そんなことはないと自分の考えを変えることができなかった。

つい最近、やはり僕が悪かったのだと気付き、その事実と向き合わなくてはならなくて、冒頭のように、自分の周りに起きた不都合なことを、全てその人のせいにして自分の過去を処理したのだと思い至った。

それから、更に三ヶ月、僕は謝る勇気を持てなかった。色々なことを言い訳にして、そのタイミングを先延ばしにしていた。

そんな時、元取引先の大先輩から、東京に単身赴任することになったので、その人と飲む機会を作ってもらいたいと依頼された。
このタイミングを逃したら、また先延ばしになってしまうと思い、思い切って連絡をして、その日会うことになったのだった。

結果として、再会出来ただけでなく、僕はまた、その人と再び一緒に仕事ができそうなチャンスをもらうこともできた。
当日同席してくれたニ人はもちろん、天気や、たまたま飛び込んだ店が非常に良かったことや、様々な巡り合わせのお陰で良い結果が得られたわけで、そうしたことには日々感謝しているけれど、今回は本当に特別だった。

その人と、きっかけを作ってくださった方と、一緒にその場にいてくれた友人、それから誰に感謝していいか分からないけど、このタイミングをくれた全てに感謝したい。

本当にありがとうございます。
あー、また頑張ろう。

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