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シラノ・ド・ベルジュラック
エドモン・ロスタン作/辰野 隆、鈴木 信太郎訳 岩波文庫

上海行きの飛行機で読もうと思って、本棚から引っ張りだして持って行った。
多分、20年ぶりくらいに読む。

この本を勧めてくれたのは、今は無くなってしまったが、学生の頃から通っていた古いバーのカウンターで知り合った雑誌記者のおじさんだった。
昔気質の物書きで、当然物知りで、格好の良い紳士で酔っぱらいだった。
勧められたてすぐに買ったものの、当時の感想はあまり良く覚えていない。良い話だったなぁ、くらい。

今回、持ってきたのは正解だったのだけど、ギュウギュウ詰めのエコノミーで読むにはちょっと失敗。
もう、泣けて泣けて(苦笑)
「ねぇ、おい、涙より気高いものは無いのだ。無いのだぜ。」って、そんなこと言われても、人前でいい年したおっさんが本を片手にポロポロ泣けないでしょ。

また、シラノの格好良いこと。
「人を頼りの蔦となるなあ真っ平御免、樫や菩提樹にはなれず、高い位には上るまいが、痩せても枯れても、独り立ち」
そして、訳も良いんだよな。日本語が非常に良い。

最後、彼が息を引き取るまでの一幕はどんどん引きこまれてしまって、切なくて愚かで格好良くて。
落ち葉のくだりから、「違います、違います、恋しいロクサアヌ、私は恋してはいなかった!」「俺の生涯は人に糧を与えて…」「俺ゃ勝利の望みがある時ばかり戦うのたあわけが違うぞ…」の盛り上がっていく台詞。で、最後は本当に格好良く死ぬんだな。

今の時代に合うかどうかはわからないけど、羽根飾は同じだと思う。
皺一つ汚点一つ附けずに僕も大事に持ち続けたい。
あー、泣いた。

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